出版物
「生存科学」誌への寄稿のお願い
1.生存科学35-1(2024)の特集テ-マ
- 特集1.「老化」
人口の高齢化は日本のみならず、グロ-バルな課題となりつつあります。高齢化のもとになる老化(Aging)については、病であるかないかについて議論の変遷があるようです。「老化を病のある人(老人)として捉える」時代から、「老化は病ではないが初病期を引き起こす」説(1990年代)へと変わり、現代では分子生物学や遺伝学の進歩により「老化は治せる病である」とする説まで登場しています。(参考 井口昭久、 老化と病気―老化とは治すことができる病気か?―、2023年8月21日、老いをみるまなざし第42回、健康長寿ネット)
人口の高齢化に伴い、ヘルシー・エイジングも提案され、また、老化に対する社会の負の反応として「エイジズム」の問題も大きな課題となっています。 (参考①)
また、欧米諸国には高齢者対策として医療ケアの提供に制限を設けることもあるようです。
更に、我が国の高齢者の死因(令和4年)で「老衰」は3位の17万9529人であり、総数に対する割合は11・4%を占めます。しかし、国際疾病分類(1948年の ICD-6)には老衰が「不適当な診断名の一群」とされ、諸外国では老衰死は少なく、日本は例外的であるという事態も長く続いています。(参考②、③)そこで「生存科学」次号(2024年12月刊行予定、35-1号)では、特集として、「老化(Aging)」について取り上げることにいたしました。前号に引き続き、生存科学を取り巻く現代の課題について提起していくものです。老化にまつわる幅広い内容を期待致します。
参考① 生存科学研究ニュースVol.38.4 松下理事長「2024 年 新しい年を迎えて」
・・・WHOが、「ヘルシー・エイジングに向けての国連の 10 年、2021-2030」というテーマを掲げ、健康な加齢を促して、老人、家族、地域の人たちの生活を豊かにするために、1) 老人にとっての優しい環境の整備、2) エイジズムとの闘い、3) 総合的なケアの実現、4) 長期にわたるケアの存在、の4つの領域での活動にとり組んでほしいと訴えました。
エイジズムの発生とその帰結に関しては、ステレオタイプとしての否定的老人観(老人偏見) ⇒ エイジズム(老人差別) ⇒ 老人虐待 ⇒ 老人殺害という図式が成り立ちます。
参考②厚生労働省発行「死亡診断書記入マニュアル」によると、老衰(死)とは「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死」とされる。
参考③林玲子・別府志海・石井太*・篠原恵美子、長寿革命に係る人口学的観点からの総合的研究 老衰死の統計分析、人口問題研究(J.ofPopulationProblems)78-1(2022.3)pp.1~18
テーマ例:
- 老化と病
- 人口の高齢化とヘルシー・エイジング
- エイジズム
- 老化と総合的なケアの実現
- 老化と長期に渡るケアの存在
- 高齢者にとって優しい環境の整備
- 諸外国の高齢者施策と老化
- 老化と老衰
- 老衰と死亡診断書
- 老化と認知症
- 老化とIT(情報技術)社会
- 老化と芸術(ア-ト)
- 老化と性
字数 5000~20000字
原稿締切り 2024年10月中旬
2024年12月刊予定
- 特集2(連載予定)「生存科学の基本用語」
「生存の理法」、あるいは「生存科学」の定義には定まったものがないとされます。2024年に公益財団法人・生存科学研究所が設立40周年を迎えましたが、創設者(武見太郎)を直接には知らない世代が主となりつつある現在、「生存の理法」、あるいは「生存科学」に対する共通理解の構築が必要でしょう。また、そのためには、過去40年間で発展の著しい「生存科学」に関連する諸分野での用語の広がりや関係性を紐解いていくことも重要であると思われます。
武見太郎先生が活躍された時代(1950年代から80年代)に遡り、その社会背景や業績にも目配りが必要でしょうし、このような生存科学の基本用語に向けた取り組みは、私たちが生きてきた時代や社会、そして科学の功罪を理解する助けとなるでしょう。それらの取り組みを通して、今後の生存科学研究所の発展に向けた、世代や分野を超えた未来への架け橋となることを期待します。
以下にテ-マの案を示します。(参考 丸井英二「衛生学を入口にして生存科学を考える:生存学への試論」、生存科学34-2予定より)
- ①「生存は単なる survival ではない」(生存とダーウィン流の「適者生存」、進化論の影響)
- ②個々の科学と、学際的 (inter-disciplinary)、俯瞰的 (trans-disciplinary) な科学
- ③生命倫理との関連
- ④自然科学と社会科学(とくに経済学)、人文学との融合
- ⑤ライフサイエンス、地球環境の危機、生態学(的視点)
- ⑥科学が還元論的に研究、遺伝子レベルでの研究
- ⑦科学や技術の流れに危機感、統合的な視野の回復、カウンターカルチャと反科学
- ⑧研究が専門化され他の領域との関連を失う、個別の科学研究や技術開発
- ⑨人間としてではなく科学者や学者、研究者として生きていた人々
- ⑩科学者的であり、現場の医療の視点から日本社会や世界を
- ⑪広い視野で「ライフサイエンス」をとらえなおす
- ⑫bioethics = the science of survival という思想
- ⑬環境を重視し、社会科学や人文学をも取り入れた領域構想
- ⑭ライフサイエンスというカタカナ語と「生命科学」
- ⑮古くからなじみのある「生存」
- ⑯bio- もまたlife と同じく「生命」に限定されないより広い「生きている」ことを意味する
- ⑰生存の「生」あるいは「生存」そのもの
- ⑱「生存」の「生」は肉体的、精神的に融合し、倫理的、宗教的及び生物学的を内包した人生
- ⑲「存」は、人間社会における多様なつながり、継承されていく実在的、総合的な存在
- ⑳「理法」の「理」は科学的、人間を超えた自然の事理
- ㉑「法」は人間社会で長年形成されてきたルール、精神的支柱
- ㉒「生存の理法」は、「生」「存」「理」「法」の総合、「「学」というよりは「道」のようなもの」
- ㉓同一性の維持と種の保存、人生としての「生存」
- ㉔「生きものは開放系として自己同一性を保ち、増殖して後続世代をつくっていく」
- ㉕私たち人類の well-being が求められ、個人から人びとへ拡張し、 well-being が「あるべき、よき生存」であり、 better life が「よりよき生存」、生存は life であり being
- ㉖生存は生命であり、生活であり、人生、よりよい生を保証するのは生産であり、政治経済学
- ㉗「生存」に進化論的な抵抗感に逆らって、白紙の「生存」概念を、「生存科学」とする
- ㉘「生存科学」が「分けられた個別科学」としてではなく、階層が一つ上の統合的なメタ科学
- ㉙生存科学の定義はむずかしい、「生存科学」が定義を許さないレベル、生存科学はメタ科学
- ㉚個別の科学が吸収されるブラックホール、専門分科を前提とした各種科学を要素とした全体システムとしての「生存学」とよぶ日本語言語空間
字数 1000~10000字
原稿締切り 2024年10月中旬
2024年12月刊予定
(なお、連載予定である)
特集の他に、独自の研究論文、提言や報告などを期待しております。また研究会メンバーの方々にも論文の投稿をお勧めいただければ幸いです。(投稿規定をご参照ください。) ご執筆の諾否、並びにテーマ(仮題)をメール等で7月30日までにお返事いただきたく、ご協力、ご支援のほど、重ねてお願い申し上げます。
寄稿の諾否はここから
2024年7月
生存科学研究所理事長 松下 正明
「生存科学」編集責任者 松田 正己