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「生存科学」誌への寄稿のお願い

1.生存科学37-1(2026)の特集テ-マ

特集:大学教育と生存(科学)

我が国が「教育を大切にする国」というイメージが、高等教育(以下、大学教育と表現する。大学院、研究等も含む。)について変容したのは、1980年代以降とされる。そのことは、公財政支出の異常な低さからわかる。日本の高等教育への政府支出は学生1人あたり8,184米ドルで、OECD平均15,102米ドルの半分強であり、高等教育費に占める公的負担割合は37.5%で、OECD平均67.4%を大きく下回る。私学助成率の後退(29.5%→約10%)と国立運営費交付金の減少(実質18〜20%減+基盤費の空洞化)等の財政データは、「国が高等教育への公的投資を国際標準以下に抑え続けてきた」ことを示している。

現在、話題となっている日本の私学並びに国公立の大学の経営難は人口減少のために「学生が減ったから」だけでなく、「公的支援が国際標準の半分しかない」という構造的要因が大きい。

日本がこれまで「教育」を重んじてきたことは疑いない。だがそこで重んじられたのは、多くの場合、初等教育であり、また、教育の内在的価値よりも、何かのための手段としての教育であった。明治の教育は富国強兵・殖産興業の手段であり、戦後の教育は復興と個人の上昇移動の手段であった。

富国強兵が「明治国家の生存」、復興が「戦後社会の生存」だったのに対し、上昇移動は「個人とその家族が、競争的な社会環境の中でより有利な階層の位置を確保し生き延びる」、個人単位の生存戦略と言える。これら三つは「教育と生存戦略」として包摂できよう。

しかしこれらは生存科学が提唱する意味での「生存」ではなく、むしろ「サバイバル」の側に属する。つまり日本が教育に託した目的・期待である、富国強兵・殖産興業、復興、「個人の上昇移動」は、競争的な環境内での順応的サバイバルだった、と整理できる。

高度経済成長が終わり、社会階層の上昇経路が細り(いわゆる格差の固定化)、しかも国民を束ねる教育の共通目的も消えたとき、教育はサバイバルのための私的投資となり、受益者負担が増加した。

今日生じている課題は「教育の意味を忘れた」ことではなく、教育が奉仕すべき目的が変わり、しかも国民を束ねる共通の目的そのものが消えたことにある。富国強兵という目的が消え、欧米へのキャッチアップという物語が消えたあと、残されたのは個人の投資収益という私的な目的だけであった。高等教育費の私費依存、私学助成率の後退、運営費交付金の実質的削減——これらの財政指標は、目的を失った教育に社会がどれだけの意味を見いだしているかの表れであろう。

本特集は、将来の教育の目的に、「生存」を置くことを提案する。ここでいう生存は、変化する環境を生き延びるためのスキルの獲得、すなわちサバイバルではない。生存科学が提唱する「生存」は、本質的に私的財に還元できない。気候変動、感染症の蔓延、少子高齢化、地域社会の存続——いずれも誰一人として単独では生き延びられない、相互依存の課題である。教育の目的を「生存」に据えることは、教育を再び公共的なものとして、しかも国際社会の中で広い「相互に依存して生きる者たちの共同性」として基礎づけ直すことを意味する。

各論考では、次のようなテーマを参考にしていただきたい。
  • ①各専門領域(医療・医療政策、看護、環境・気候変動、政治経済・格差社会、死生学、ケア・認知症、多文化共生、少子高齢化社会、デジタル・デバイド等)において、教育がどの目的のための手段とされてきたか。
  • ②その目的が空洞化したとき何が失われたか。
  • ③「生存」をその領域における教育の目的として据えたとき、教育はどう変わるか。

例えば、以下のようなアプローチが可能であろう。

  1. 歴史として—共通目的が個人の生存戦略へ転回点(臨教審・受益者負担)を検証する。
  2. 教育の私事化への対抗原理としての生存——教育の公共性論を、生存の相互依存性から基礎づけ直し、受益者負担論への原理的反論を試みる。
  3. 生存のための教育とは何か——武見太郎の生存観の系譜から、規範創造の力としての教育を構想する。
  4. 惑星規模の生存課題(プラネタリーヘルス)と教育。

字数 5000~20000字
原稿締切り 2026年9月末
2026年11月刊予定

特集の他に、独自の研究論文、提言や報告などを期待しております。また研究会メンバーの方々にも研究成果の投稿をお勧めいただければ幸いです。(投稿規定にAI使用の開示を追加しました。) ご執筆の諾否、並びにテーマ(仮題)をメール等で7月末日までにお返事いただきたく、ご協力、ご支援のほど、重ねてお願い申し上げます。

2026年7月
生存科学研究所理事長 松下 正明
「生存科学」編集責任者 松田 正己