出版物
「生存科学」誌への寄稿のお願い
1.生存科学35-2(2025)の特集テ-マ
- 特集1.「希望について」
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2024年を振り返ってみると、世界では紛争が続き、政治的な不安定要因も増しています。現代の社会には問題が山積しており、それぞれの課題に対応している人々の間には疲労感が漂っている様に見受けられます。この様な時代に求められていることは何でしょうか。
昨年末11月26日にパレスチナの保健局長をされている清田医師(武見フェロー)が読売国際協力賞を受賞されることになり、帰国し話をされる機会がありました。印象に残ったのは、困難な状況の中、ガザ地区で医療活動が継続されていることと、「希望を失わないことの重要性」(脚を失った子供が、まだ生きていると伝えてくれと笑顔のメッセージ)を最後に述べられていたことでした。
また、パキスタンでの医療活動を支援する目的で結成された国際NGO団体ペシャワール会では、村上優医師が後を引き継ぎ、亡くなられた中村哲医師の事業と「希望」はすべて引き継ぐ、というメッセージを掲げています。
今、私たちが語るべきことは「希望について」であるのでしょう。
そこで「生存科学」次号(2025年6月刊行予定、35-2号)では、特集として、「希望」について取り上げることにいたしました。前号に引き続き、生存科学を取り巻く現代の課題について提起していくものです。希望にまつわる幅広い内容を期待致します。
テーマ例:
- 希望と病
- 希望と総合的なケアの実現
- 希望と長期に渡るケアの存在
- 諸外国の高齢者施策と希望
- 希望と認知症
- 希望とIT(情報技術)社会
- 希望と芸術(ア-ト)
- 希望と性
字数 5000~20000字
原稿締切り 2025年4月中旬
2025年6月刊予定
- 特集2(連載)「生存科学の基本用語」
「生存の理法」、あるいは「生存科学」の定義には定まったものがないとされます。2024年に公益財団法人・生存科学研究所が設立40周年を迎えましたが、創設者(武見太郎)を直接には知らない世代が主となりつつある現在、「生存の理法」、あるいは「生存科学」に対する共通理解の構築が必要でしょう。また、そのためには、過去40年間で発展の著しい「生存科学」に関連する諸分野での用語の広がりや関係性を紐解いていくことも重要であると思われます。
武見太郎先生が活躍された時代(1950年代から80年代)に遡り、その社会背景や業績にも目配りが必要でしょうし、このような生存科学の基本用語に向けた取り組みは、私たちが生きてきた時代や社会、そして科学の功罪を理解する助けとなるでしょう。それらの取り組みを通して、今後の生存科学研究所の発展に向けた、世代や分野を超えた未来への架け橋となることを期待します。
第一回では、生命倫理とHIV/エイズを取り上げました。
以下にテ-マの案を示します。(参考 丸井英二「衛生学を入口にして生存科学を考える:生存学への試論」、生存科学34-2より)
- ①「生存は単なる survival ではない」(生存とダーウィン流の「適者生存」、進化論の影響)
- ②個々の科学と、学際的 (inter-disciplinary)、俯瞰的 (trans-disciplinary) な科学
- ③生命倫理との関連
- ④自然科学と社会科学(とくに経済学)、人文学との融合
- ⑤**ライフサイエンス、**地球環境の危機、生態学(的視点)
- ⑥科学が還元論的に研究、遺伝子レベルでの研究
- ⑦科学や技術の流れに危機感、統合的な視野の回復、カウンターカルチャと反科学
- ⑧研究が専門化され他の領域との関連を失う、個別の科学研究や技術開発
- ⑨人間としてではなく科学者や学者、研究者として生きていた人々
- ⑩科学者的であり、現場の医療の視点から日本社会や世界を
- ⑪広い視野で「ライフサイエンス」をとらえなおす
- ⑫bioethics = the science of survival という思想
- ⑬環境を重視し、社会科学や人文学をも取り入れた領域構想
- ⑭ライフサイエンスというカタカナ語と「生命科学」
- ⑮古くからなじみのある「生存」
- ⑯bio- もまたlife と同じく「生命」に限定されないより広い「生きている」ことを意味する
- ⑰生存の「生」あるいは「生存」そのもの
- ⑱「生存」の「生」は肉体的、精神的に融合し、倫理的、宗教的及び生物学的を内包した人生
- ⑲「存」は、人間社会における多様なつながり、継承されていく実在的、総合的な存在
- ⑳「理法」の「理」は科学的、人間を超えた自然の事理
- ㉑「法」は人間社会で長年形成されてきたルール、精神的支柱
- ㉒「生存の理法」は、「生」「存」「理」「法」の総合、「「学」というよりは「道」のようなもの」
- ㉓同一性の維持と種の保存、人生としての「生存」
- ㉔「生きものは開放系として自己同一性を保ち、増殖して後続世代をつくっていく」
- ㉕私たち人類の well-being が求められ、個人から人びとへ拡張し、 well-being が「あるべき、よき生存」であり、 better life が「よりよき生存」、生存は life であり being
- ㉖生存は生命であり、生活であり、人生、よりよい生を保証するのは生産であり、政治経済学
- ㉗「生存」に進化論的な抵抗感に逆らって、白紙の「生存」概念を、「生存科学」とする
- ㉘「生存科学」が「分けられた個別科学」としてではなく、階層が一つ上の統合的なメタ科学
- ㉙生存科学の定義はむずかしい、「生存科学」が定義を許さないレベル、生存科学はメタ科学
- ㉚個別の科学が吸収されるブラックホール、専門分科を前提とした各種科学を要素とした全体システムとしての「生存学」とよぶ日本語言語空間
字数 1000~10000字
原稿締切り 2025年4月末
2025年6月刊予定
特集の他に、独自の研究論文、提言や報告などを期待しております。また研究会メンバーの方々にも論文の投稿をお勧めいただければ幸いです。(投稿規定をご参照ください。) ご執筆の諾否、並びにテーマ(仮題)をメール等で2月10日までにお返事いただきたく、ご協力、ご支援のほど、重ねてお願い申し上げます。
寄稿の諾否はここから
2025年1月
生存科学研究所理事長 松下 正明
「生存科学」編集責任者 松田 正己