出版物
「生存科学」誌への寄稿のお願い
1.生存科学36-2(2025)の特集テ-マ
- 特集:「生命権」と「生存権」
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『生存科学』次号(2026年6月刊行予定、36-2号)では、特集「生命権と生存権」を組みます。前号に引き続き、生存科学をめぐる現代的課題を広く提示するものであり、多角的な視点からの論考を期待しております。
「生命権」と「生存権」はわが国憲法における基本的人権の核心ですが、その捉え方は焦点の当て方や世代により大きな隔たりが見受けられます。例えば「生命権」では、NIPT(新型出生前診断)をめぐる胎児の「生命権」と障害者の「生存権」、さらに妊婦の自己決定権との葛藤が議論されています。一方、社会的弱者(ワーキングプア、障害者、高齢者、子ども、非正規労働者、外国人等)の「生存権」においては、給付水準やアクセスの平等性、自己責任論との対立が鋭角化しています。
当事者間で多様な議論がなされる一方で、それらを共通基盤で検討する視座が未確立であるという課題もあります。また、個人の社会的環境の違いや、高度成長期以降に生まれ戦争体験を持たない世代(現65歳以下)にとって、これらの権利の切実な重みを実感しにくい現状も推測されます。「生命権」や「生存権」は、それが脅かされた時に初めてその真価が自覚される性質を持つとも言えるでしょう。
生存科学の創始者の武見太郎氏は、著作の中で折に触れこれらの問題に言及してきましたが、本誌で「生命権」や「生存権」のテーマを真正面から特集したことはこれまでありませんでした。今日、胎児のいのちや貧困、高齢者医療・介護、社会保障制度改革といった国内課題に加え、米国の政治対立やウクライナ、パレスチナ等の国際紛争が突きつける厳しい現実に直面し、これら二つの権利の基本理解を改めて深めるべき時期が来ています。
本特集では、戦後積み重ねられてきた議論の歴史を回顧しつつ、「生命権」や「生存権」の「現代的意味」を考究します。また、AI技術(バイオ、ナノ、インフォ等)が生存に及ぼす影響、安楽死・尊厳死をめぐる死のあり方、さらには情報文明、宗教、哲学等の諸課題も、生存に関わる以下のような個別テーマとして包含する予定です。
- 「生命権」と「生存権」のテ-マの例
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- 生存科学と「生命権」・「生存権」
- 生殖医療(NIPT・ゲノム編集)
- 医療・医療政策
- 看護
- 環境(気候変動・居住権)
- 政治経済(格差社会・最低賃金)
- 死生学(安楽死・尊厳死問題を含む)
- ケア・認知症
- 多文化共生(在留外国人の人権)
- 世代間公正(少子高齢化社会の資源配分)
- デジタル・デバイド(情報アクセスの格差)
字数 5000~20000字
原稿締切り 2026年4月末
2026年6月刊予定
- 特集2(連載)「生存科学の基本用語」
「生存の理法」、あるいは「生存科学」の定義には定まったものがないとされます。2024年に公益財団法人・生存科学研究所が設立40周年を迎えましたが、創設者(武見太郎)を直接には知らない世代が主となりつつある現在、「生存の理法」、あるいは「生存科学」に対する共通理解の構築が必要でしょう。また、そのためには、過去40年間で発展の著しい「生存科学」に関連する諸分野での用語の広がりや関係性を紐解いていくことも重要であると思われます。
武見太郎先生が活躍された時代(1950年代から80年代)に遡り、その社会背景や業績にも目配りが必要でしょうし、この取り組みを通して、私たちが生きてきた時代や社会、そして科学の功罪を理解する助けとなるでしょう。今後の生存科学研究所の発展に向けた、世代や分野を超えた未来への架け橋となることを期待します。
第一回では、生命倫理とHIV/エイズを取り上げました。
以下にテ-マの案を示します。(参考 丸井英二「衛生学を入口にして生存科学を考える:生存学への試論」、生存科学34-2より)
- ①「生存は単なる survival ではない」(ダーウィン流の「適者生存」、進化論の影響) 、古くからなじみのある「生存」
- ②個々の科学と学際的 (inter-disciplinary)、俯瞰的 (trans-disciplinary) な科学
- ③生命倫理との関連、bioethics = the science of survival という思想
- ④自然科学と社会科学(とくに経済学)、人文学との融合領域構想
- ⑤広い視野で「ライフサイエンス」をとらえなおす、ライフサイエンスというカタカナ語と「生命科学」、地球環境の危機、生態学(的視点)
- ⑥科学が還元論的に研究、遺伝子レベルでの研究、科学や技術の流れに危機感、統合的な視野の回復、カウンターカルチャと反科学
- ⑦研究が専門化され他の領域との関連を失う、個別の科学研究や技術開発
- ⑧人間としてではなく科学者や学者、研究者として生きていた人々
- ⑨科学者的であり、現場の医療の視点から日本社会や世界を
- ⑩bio- もまたlife と同じく「生命」に限定されない広い「生きている」ことを意味
- ⑪「生存の理法」は、「生」「存」「理」「法」の総合、「「学」よりは「道」のようなもの」
- ⑫「生存」の「生」は肉体的、精神的に融合し、生存権的、宗教的及び生物学的を内包した人生、「存」は、人間社会における多様なつながり、継承されていく実在的、総合的な存在。生存の「生」あるいは「生存」そのもの
- ⑬「理法」の「理」は科学的、人間を超えた自然の事理、「法」は人間社会で長年形成されてきたルール、精神的支柱
- ⑭同一性の維持と種の保存、人生としての「生存」
- ⑮「生きものは開放系として自己同一性を保ち、増殖して後続世代をつくっていく」
- ⑯私たち人類の well-being が求められ、個人から人びとへ拡張し、「あるべき、よき生存」であり、 better life が「よりよき生存」、生存は life であり being
- ⑰生存は生命であり、生活、人生、よりよい生を保証するのは生産であり、政治経済学
- ⑱「生存」に進化論的な抵抗感に逆らって、白紙の「生存」概念を、「生存科学」とする
- ⑲「生存科学」が「分けられた個別科学」としてではなく、階層が一つ上の統合的なメタ科学、生存科学の定義はむずかしい、「生存科学」が定義を許さないレベル
- ⑳個別の科学が吸収されるブラックホール、専門分科を前提とした各種科学を要素とした全体システムとしての「生存学」とよぶ日本語言語空間
字数 1000~10000字
原稿締切り 2026年4月末
2026年6月刊予定
特集の他に、独自の研究論文、提言や報告などを期待しております。また研究会メンバーの方々にも研究成果の投稿をお勧めいただければ幸いです(投稿規定は近々、変更予定です)。ご協力、ご支援のほど、重ねてお願い申し上げます。
2026年2月
生存科学研究所理事長 松下 正明
「生存科学」編集責任者 松田 正己
